火災保険・地震保険・施設賠償責任保険は必須です
自然災害などで賃貸物件が被害に遭った場合どうなるのでしょうか。その場合に、大家さんとして賃貸経営にどう対応し、入居者にどこまで補償する義務があり、そのためにどんな保険に加入すればいいか。
こんな疑問にお答えします。
災害リスクに備えるため
近年は火災や地震、台風などの風水害をはじめ自然災害・異常気象が多発しています。それらの災害自体をコントロールすることは不可能ですが、災害リスクに備えることはできます。
そういった突発的な事故はいつ起きるかわかりませんし、修理費用も高額になったり復旧する間の家賃収入が途絶えたりするケースもあります。
建物の賃貸借契約書には、自然災害などで建物が滅失した場合に契約が消滅するという趣旨の文言がかかれているケースがほとんどですが、自然災害により建物がなくなる(滅失)まで至らなかった場合、原則として修繕義務が発生します。
建物が自然災害で滅失した場合は、大家さんと入居者のどちらの責任でもないため、大家さんに損害賠償義務はなく修繕義務もありません。また、民法では大家さんが修繕をしない場合は借主は使用できない割合に応じて賃料の支払いを拒否することができると定めています。
そのため、火災保険・地震保険・賠償責任保険は賃貸経営する大家さんにとって一番重要なものです。災害リスクなど突発的な事故により所有建物に多額の修理費用が掛かった場合や建物が全て壊れてしまった場合でも、これらの保険が助けてくれるからです。
賃貸経営とは所有されている建物を貸し出して家賃収入を得ることです。万が一の時に所有物件が損害を受けて、大きな修理費用が発生したり、建物が滅失して家賃収入がなくなると経営に大きなダメージを受けます。
また、借入金のある場合には、万が一返済が滞ると経営破綻となりますので、なおさら災害リスクに備える必要があります。
- 災害はいつ起こるかわからない
- 災害により建物が使用不能や修理が必要になる
- 家賃収入がなくなると経営破綻する
- そのために保険が必要
- 保険料は経費になる
建物のメンテナンス・リフォームのため
ほとんどの方が火災保険は火災しか出ないと思われています。しかし、火災保険は火災だけを補償するものではなく、その他にも色々な補償が付いています。
- 台風で屋根が壊れた
- 雹が降ってカーポートの屋根が壊れた
- 大雪の重みにより雨樋が壊れた
- 給排水管から水漏れし天井・クロス・床が水濡れした
- 泥棒に入られて窓ガラスを壊された
- 部屋の模様替え中に壁に穴を開けてしまった
- 壁にスプレー缶でいたずらされた
自然災害から日常のちょっとした事故まで、これからの事故すべてが火災保険で修理することができます。賃貸経営を行うためには建物を維持管理することが重要で、こまめにメンテナンスしておけば大きな修繕費も掛かりません。
—関連記事—火災保険の補償内容についてはこちらでご確認ください。
自然災害以外のリスク(賠償事故)に備える
自然災害以外にもリスク対策が必要です。賃貸経営する上で、建物の欠陥や建物に起因する偶然な事故により大家さんに賠償責任が発生することがあります。こういった場合に対応するのが施設賠償責任保険です。
- 建物の壁が剥がれ落ち入居者や通行人など第三者が怪我をしたり、駐車場に停めてある車両に当たった
- 給排水設備の事故により漏水させ、入居者の家財に損害を与えた
- 建物や設備の不備や欠陥によって火災や爆発事故が発生し、入居者や通行人にケガをさせたり、近所の家屋も損壊させた
これらのような事故で高額な賠償例もあります。また施設賠償責任保険の保険料は火災保険や地震保険に比べると割安ですので、必ず加入しましょう。
万が一大きな損害賠償になった場合でも施設賠償責任保険に加入していれば訴訟費用や弁護士費用も支払われるので安心です。
そういった時に守ってくれるのは火災保険・地震保険・賠償責任保険になります。また、保険料は経費になりますから、賃貸経営をする上で火災保険・地震保険・賠償責任保険は必須です。
- 自然災害以外のリスクに備える
- 賠償事故は高額になるケースもある
- 保険料は経費になる
—関連記事—施設賠償責任保険についてはこちらでご確認ください。
公的支援がないため保険による備えが必要
一般世帯の場合は、自然災害により被害を受けた場合に、被災者生活再建支援法から支援金を受け取れます。
被災者生活再建支援法の現状では、住宅の所有・非所有にかかわらず、居住者のみが支援対象となるため賃貸人(大家)、店舗、作業場、事業所、工場などへの支援はありません。
大家さんが賃貸物件に甚大な被害を受けても、支援金を受け取ることはできないため保険等による備えが基本であり、自助努力が必要です。
- 大家さんには公的支援はない
- 公的支援は一般世帯のみ
- そのため保険等による備えが必要
—関連記事—被災者生活再建支援法についてはこちらでご確認ください。
放火・延焼のリスク
大家さんに責任のない放火や延焼により建物が火災にあった場合、失火責任法により原則として火元から賠償を受けることはできません。
ですので、大家さん自身で建物に火災保険に入る必要があり、入居者による失火に備えるため入居者自身に借家人賠償責任保険+個人賠償責任保険が付いた火災保険に入ってもらう必要があります。
- 失火責任法により原則として火元から賠償を受けられない
- 大家さんは建物に火災保険をかける
- 入居者には家財の火災保険と借家人賠償+個人賠償が付いた火災保険に加入させる
—関連記事—失火法についてはこちらでご確認ください。
所有しているものに保険をかける
マンションやアパートの大家さんで入居者が保険に加入しているので自分で保険を掛ける必要はないと勘違いされている方がいらっしゃいます。マンションやアパート一棟の大家さんや、マンション区分所有の大家さんも、所有する建物について火災保険をかけます。
建物一棟を所有する大家さんの場合、建物全体に火災保険をかけます。マンション区分所有大家さんの場合は、所有されている専有部分に火災保険をかけ、共用部分はマンション管理組合で火災保険をかけることになります。いずれの場合にしろ、大家さんがかける必要があるのは建物の火災保険で、入居者は自分の家財に火災保険をかけることになります。
- 戸建て大家さんは建物に保険をかける
- マンション区分所有大家さんは専有部分に保険をかける
- 入居者・テナントは自分の家財・什器に火災保険をかける